少し前に年が明けたと思ったら、あっという間に3月も後半にさしかかり、新年度の足音が聞こえてきました。あっという間といえば、当院が開院して3年が経とうとしています。ちょうど3年前、開院をひかえたこの頃、楽しみというよりは不安とプレッシャーに押しつぶされそうだった、あのドキドキ感は今も鮮明に覚えています。
開院当初からの私たちの合言葉「当院を訪れる一人ひとりに真摯に向き合い丁寧に接する。」、この初心を忘れることなく、4年目を迎えたいと考えています。
初めての外来診療の思い出
「初心」ということで、思い返せば・・私が初めて外来診療を経験したのは医師になって3ヶ月ほどのことでした。初めて担当した患者さんは実の祖母でした。初めて診察室の椅子に座り、体調を崩した祖母を診察しました。
検査結果・治療方針を指導医の先生に確認してもらい、初めて作った処方箋を祖母に渡しました。診察室から出ていく際、祖母は私に向かって「直くん(私の呼称です)に診てもらえて、おばあちゃんは幸せや。」と言ってくれました。
ここで多くは語りませんが、祖母は私にとって大恩人の一人です。そんな祖母からの言葉に、飛び上がりそうなくらい嬉しい気持ちになった、それが私にとっての外来診療の原点です。
もっとうまくなりたい!
「知らない病気は診断できない。」これは私の前職(神戸大学総合内科)のボスだった坂口一彦先生の言葉です。
知らない病気を診断できるはずもなく、当然といえば当然ですが「謙虚に学び続けることが必要」といった趣旨だと捉えています。誰よりも貪欲に学び続ける坂口先生が言うだけに、とても重みがある言葉だと感じていました。
経験値を貯めていくことは重要ですが、それも十分な知識があってこそです。内科医として常にアンテナを張り、知識をアップデートし続けるため、自分自身の戒めに坂口先生の言葉を思い返すようにしています。
くわえて、外来診療では時間的な制約があり、瞬時の判断やひらめきが必要な場面が多々あります。
あとになって振り返ると、「もっとこうできたのではないか?」や「もっと気の利いた声かけができたのではないか?」と思うことは今でも時々あります。もっともっと診療がうまくなりたい、理想の診療に近づけていきたい、そんな気持ちをずっと忘れずにいたいです。
おわりに
私事ですが、ほどなくして40歳になります。40歳といえば「不惑」と呼ばれますが、これは孔子(紀元前551年~479年)の言葉をまとめた『論語』の中の一節「四十にして惑わず」に由来しています。
不惑とは、ものの考え方や生き方に迷いがなく、確固たる信念を持っていることを表します。自分の進むべき道を定め、周りの意見や誘惑に心揺れたり迷ったりしない、目指すべき姿ではないでしょうか。
一方で、不惑は「不或(くぎらず)」の誤記だったのではないかという説もあります。不或とは、自分を限定しない(枠にはめない)という意味です。つまり、40歳になっても自分の可能性を決めつけず、チャレンジし続けることが重要だというのが、孔子の真の教えだったのかもしれません。
せっかくなので、不惑と不或の良いとこ取り「自分のやるべきことを信じて突き進む、かつ新たな可能性に挑戦し続ける。」を目標にしたいと思います。
2026年3月19日