「ストレートネック」というものをご存知でしょうか。「首筋がまっすぐ伸びている」と聞くと、良いことのように思われるかもしれませんが、ストレートネックはその逆で、実は良くない状態です。
私自身も、神戸大学の総合内科に在籍していた頃に先輩医師から「原因不明の体調不良を訴える人の中に、ストレートネックが原因と考えられるケースがある。」と教えてもらい、ストレートネックという言葉を初めて聞きました。
日々の診察の中で、肩こりでお困りの方が結構多くいらっしゃいます。もしかするとストレートネックが、その肩こりの原因かもしれません。
ストレートネックとは
本来、頸椎(首の骨)は、緩やかに前方へカーブしています。そのカーブが失われてしまい、頸椎がまっすぐになるのがストレートネックです。下の図でいうと、左が正常の頸椎、右がストレートネックです。ストレートネックになると、頭が前に出た形になるので、頭部(約5 kg)を支える首や肩、背中の筋肉には大きな負担がかかります。
ストレートネックは「姿勢の生活習慣病」といわれ、普段の何気ない姿勢が原因になります。猫背で前かがみの時間が長く続けると、頸椎のカーブが徐々に失われていきます。立った状態や座った状態でスマートフォン(スマホ)を見ている姿勢をイメージしてもらえると分かりやすいと思います。ストレートネックは「スマホ首」と同義で使われることもあります。
他には、長時間のパソコン作業、合わない枕(高すぎる)などもストレートネックを引き起こします。また、腰や背中を丸めて座ると、自然と首が前に出てしまうので、座る姿勢もストレートネックの原因になり得ます。
ストレートネックで引き起こされる症状
ストレートネックになることで、首周りの筋肉のみならず血管や神経にも負担がかかり、以下のようにさまざまな症状の原因になると考えられています。
〇首・肩・背中・腰のこりや痛み
〇頭痛、めまい、吐き気
〇からだのだるさ、疲れやすい
〇手のしびれや冷え
〇不眠、気分の落ち込み(抑うつ)
ストレートネックの状態が慢性化し、加齢による背骨の変化が加わったりすると、脊髄症といって手足の麻痺などが出るリスクがあります。
ストレートネックを予防するために
先述した通り、ストレートネックは日々の何気ない姿勢が原因となるので、「姿勢を意識する」ことでリスクを軽減できます。
〇スマホやタブレットを見る際、目線を下げすぎないようにする。
〇パソコンの画面は目の高さに合わせる。
〇椅子に座る際、深めに座り、背筋を伸ばし、背もたれに寄りかかる。
〇長時間同じ姿勢とならないよう、定期的に休憩をとり、からだを動かす。
〇ストレッチやエクササイズで、首周りの筋肉をほぐし柔軟性を保つ。
〇自分に合った枕を選ぶ
特にストレートネックになりやすい仕事内容(デスクワークなど同じ姿勢で作業する)の方は、意識的に上記の対策を講じるのが望ましいです。肩こりなどに対して、整体やマッサージに通っている方もいらっしゃるかもしれませんが、それだけで改善することは難しいと思います。
おわりに
姿勢の生活習慣病、ストレートネックについて紹介しました。良い姿勢でいることは、心身ともに健やかでいるために重要かもしれません。かの名曲「上を向いて歩こう」ではありませんが、うつむかず、胸を張って新年度を迎えたいですね。
2025年3月29日