つい先日(10月30日)、禁煙補助薬であるチャンピックス®の出荷が再開されました。
2021年6月に出荷停止となり早4年、禁煙を考えている方にとっての吉報ではないでしょうか。今回は第3回以来、久々に禁煙に関する話です。前半はチャンピックス®について、後半は「タバコ1本が寿命に与える影響」の最近の報告を紹介します。

チャンピックス®(バレニクリン)について
チャンピックス®は、脳内にあるニコチンが結合する場所(ニコチン受容体)に作用する、ニコチンを含まない禁煙補助薬です。以下の2つの作用を発揮することで、禁煙をサポートします。
① ニコチン離脱症状を軽減
ニコチン受容体に結合し、少量のドパミン遊離を促すことで、ニコチン離脱症状(イライラや不安)やタバコを吸いたい気持ちを軽減します。
② 喫煙による満足感をブロック
ニコチン受容体に結合することで、タバコから入ってきたニコチンが受容体に結合するのを邪魔(阻害)します。その結果、脳がタバコを吸うメリットを得られず、喫煙しても「おいしい」と感じにくくなります。
ニコチンテープ(ニコチネルTTS®)にも①の効果がありますが、チャンピックス®は受容体に直接作用するので、より効果は強いと考えられます。また、②はチャンピックス®独自の作用であり、仮に途中で喫煙してしまっても失敗につながりにくくなる要因となることで、禁煙成功率を高める可能性があります。
実際のところ、多くの禁煙外来において、チャンピックス®は禁煙補助薬として第一選択でした。2024年10月に日本禁煙学会が実施したアンケート調査で、禁煙外来をもつ医療機関の約半分が、チャンピックス®出荷停止後に禁煙外来を閉鎖していることが分かりました。
当院ではニコチネルTTS®しか使えない状況の中、禁煙外来を行っていますが、皮膚トラブルのためニコチネルTTSを継続することが難しい方が少なからずいらっしゃいます。「飲み薬が使えるようになれば禁煙外来を受けたい。」といった患者さんの声もありました。
コロナ禍にチャンピックス出荷停止に、逆風ばかりだった禁煙外来ですが、ようやく再始動と言っても良いと思います。
喫煙が寿命に与える影響
みなさんはタバコが体にとって良くないことはご存知でしょうが、1本のタバコがどれくらい寿命を縮めるかイメージできますか?
2000年に発表された論文(BMJ.2000;320(7226):53.)では、タバコ1本あたりの寿命の損失は約11分と推定されていました。これは40年(~1991年)にわたって英国人男性の死亡率を追跡したデータを基に算出された値です。
そのデータを10年間延長し、さらに女性の死亡率のデータを加味した研究結果が最近報告されました(Addiction.2025;120(5):810-812.)。その報告によると、タバコ1本で失われる寿命は、平均すると約20分(男性17分、女性22分)でした。
喫煙による影響は蓄積していくものであり、早く禁煙するほど寿命は延びると考えられます。例えば、1日10本吸う人が1年間禁煙すれば、50日分の寿命の損失を防ぐことができると計算されています。
おわりに
タバコはお財布の中身を奪うだけではなく、1本あたり20分の健康な時間を奪うかもしれないといった話をさせていただきました。タバコの値上げはこれからも続く見通しですし、早く禁煙するに越したことはないと思います。
チャンピックス®の供給が再開となった今、あらためて禁煙を考えてみてはいかがでしょうか。
2025年11月21日