「春眠暁を覚えず」と言いますが、みなさんぐっすり眠れていますか。
人生の3~4分の1を占める睡眠は、健康のためにとても大切です。
短い睡眠時間と精神疾患や心血管疾患(心不全、心筋梗塞や脳卒中)との関連が知られていますが、睡眠の質が良くないと同様のリスクが高くなる可能性があります。なんだか通販番組での寝具紹介みたいな始まりですが、今回は睡眠呼吸障害(いわゆる睡眠時無呼吸症候群)についてです。
先日最新版が出た「循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン(2023年3月)」についても紹介させていただきます。
睡眠呼吸障害とは
睡眠呼吸障害は、睡眠障害(睡眠に何かしらの問題があることの総称)のなかでも頻度が高く、不眠症として睡眠薬を服用されている方に睡眠呼吸障害が隠れている可能性があります。
睡眠呼吸障害は、睡眠の質を落とし(熟眠感が得られない)、日中の眠気や疲労感の原因になるだけではなく「循環器疾患をはじめ複数の臓器や組織、疾患にかかわる病態」とされています。
具体的には高血圧や治療抵抗性高血圧(3剤以上の降圧薬を要する)、糖尿病、腎疾患、不整脈や心血管疾患などとの関与が知られています。
以下のいずれかに該当する方は、睡眠呼吸障害の可能性があります。
睡眠呼吸障害の検査
続いて、睡眠呼吸障害の検査についてです。睡眠状態を詳細に評価するには、睡眠ポリグラフ(PSG)検査がもっとも有用です。ですが、脳波など多くの装置を用いるため、PSG検査を行うには入院する必要があります。
簡易検査は、睡眠ポリグラフ(PSG)検査に比べて自宅で気軽に睡眠呼吸障害を評価する方法です。
手の指と鼻の下にセンサーをつけた上で、普段と同じように寝ている間にできます。自宅に機械が届くので、検査が終われば返送すれば1~2週間で結果が出ます。簡易検査では、呼吸障害指数(REI)から睡眠呼吸障害の有無および重症度を評価します。
睡眠呼吸障害の治療
睡眠呼吸障害の治療には、マウスピース、持続陽圧呼吸(CPAP)療法、外科治療があります。
肥満を合併した方では、減量も有効とされています。また、喫煙や寝る前の飲酒、睡眠薬の一部(ベンゾジアゼピン系)も睡眠呼吸障害のリスクとなるので、見直すことが望ましいです。
【マウスピース】
睡眠中の気道閉塞を防ぐのが目的で、軽症の方に適しています。歯科医院で作ってもらいます。持続陽圧呼吸(CPAP)療法ほどの短期的な効果はないものの、継続しやすいのがメリットです。
【持続陽圧呼吸(CPAP)療法】
閉塞性のタイプで最も普及している治療法です。睡眠中に無呼吸とならないように、気道に空気を送り続けて気道の閉塞を防ぎます。実際には、空気を送る機械とつながったマスクを鼻に装着して寝ます。
特にCPAP療法をはじめた頃は、マスク装着や空気が送られてくることへの不快感が出てしまう方もいます。しかし、多くの方が効果(熟眠感、日中の活力回復)を実感されています。
ひと晩で4時間以上使用することで、心臓や血管に対するリスクを減らすことができるとされています。
【外科治療】
鼻閉改善手術、咽頭形成術、顎矯正術、植込み型舌下神経刺激療法があります。これらの適応があるかどうかは、耳鼻咽喉科で評価します。
睡眠呼吸障害と血糖の関係
最後にあらためて、睡眠呼吸障害があると血糖は高くなります。これには交感神経の亢進やインスリン抵抗性(インスリンが効きにくくなる)などが寄与するといわれていますが、CPAP療法によって改善する可能性があります。
とはいえ、まずは睡眠呼吸障害を疑い、調べることが大切です。
当院では簡易検査を行うことができます。精密検査が必要な場合は、近隣でPSG検査(一泊入院)が可能な病院を紹介させていただきます。
睡眠呼吸障害を治療することは、元気な日常を送ることだけでなく、将来の重大な病のリスクを下げることにつながります。
睡眠呼吸障害の疑いのある方(「いびき」だけでもその可能性はあります)は、調べてみてはどうでしょうか?