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院長ブログ-06 体組成に関する私たちの論文が掲載されました|糖尿病内科 むらまえクリニック

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体組成に関する私たちの論文が掲載されました

InBody(インボディ)の写真検査の頁でも取り上げていますが、当院ではInBody(インボディ)という機械を用いて体組成を調べることができます。
体組成とは、具体的には筋肉量や体脂肪量、体脂肪率、筋肉や脂肪の分布や水分のバランスなどです。筋肉量や体脂肪量は糖尿病の状態を評価するための指標の一つになります。

食べた量や動いた量というのを完全に定量化・可視化することはできませんが、体組成を評価することで私たち医療者と共有し、一緒にふり返ることができます。よって、体組成の変化を経時的にみることは意義があると考えています。

 

手前味噌ではありますが、InBody(インボディ)に関する私たちの論文「Determinants of phase angle in Japanese patients with diabetes(日本人糖尿病患者における位相角の決定因子に関する検討)」が、先日Diabetology International(日本糖尿病学会の英文誌)に掲載されました。
私たちはInBodyで得られるphase angle(位相角)という指標に注目しました。
位相角は「細胞膜」の健康状態を反映し、数値が大きい方が細胞膜は健康ということになります。

神戸大学糖尿病・内分泌内科と糖尿病内科まつだクリニックの共同研究により、糖尿病をもつ方655名を対象に、位相角に影響を与える要因の検討、および血糖の平均値(HbA1c)との関係を調査しました。
その結果、位相角は細胞外水分比という水分バランスの指標(心不全や腎不全といった臓器障害と関連)と強い負の相関関係があること、さらに位相角はHbA1cの影響を受ける(HbA1cが高くなると位相角は低くなる)ことが明らかになりました。
今後の展望として、位相角の推移を評価することで、何が位相角の変化に影響を与えるのか?また血糖が変わると体組成はどう変わるのか?といったことを検討していきたいと考えています。

 

実は、この研究は私が大学院で主に行っていたテーマであり、この論文は医学博士のための学位論文となります。
そもそも本テーマのアイディアは糖尿病内科まつだクリニックの松田先生からいただきましたし、研究計画書の作成からデータ収集そして解析にあたって多くの方、様々な領域の専門家からご指導賜りました。
特に、私の恩師であります神戸大学医学部附属病院 総合内科の坂口先生にはとても熱心に指導、支援をしていただきました。1編の論文にいかに多くの人が関わり、多くの労力がかかることを痛感しました。共著者の皆さまには本当に感謝の念が尽きません。
研究を行うためには科学のプロセス「観察→仮説→計画→実験→結果の検証」をくり返し、研究の質を高めていくことが必要です。これは臨床の場で、患者さんに対し「診察→推論→診断→治療→経過観察」の流れと通じるものがあります。
科学的なアプローチ・論理的思考の習得は、道半ばですが、この経験を今後の診療に活かしていきたいと思います。

 

「Determinants of phase angle in Japanese patients with diabetes(日本人糖尿病患者における位相角の決定因子に関する検討)」

2023年6月26日