前回(第7回)に引き続き熱中症の話です。
前半は一般的な予防策、後半は経口補水療法について述べようと思います。前半は熱中症環境保健マニュアル2022(環境省)を参考にしています。
熱中症のリスクを少しでも減らすために、よろしければ参考にしてみてください。
暑さを避ける
前回のブログで、熱中症が起こりやすい環境(高温多湿、急な気温上昇、強い日差し、風通しが悪い)を紹介しました。
それらをふまえ、行動、住まい、衣服それぞれの工夫をあげてみます。
こまめに水分をとる
汗をかくことで私たちは体温調節をしています。汗で失う分、より多くの水分、そして塩分の摂取が必要です。必要な水分の目安として、最低でも1日1.2リットル(食事以外)とされていますが、汗の量に応じて水分摂取量も増やさないといけません。
軽い脱水状態になるとのどの渇きを感じにくくなるので、のどが渇く前に意識して水分をとるようにしましょう。尚、アルコールは利尿作用などでむしろ脱水を助長することになるので、水分摂取としては不適切です。
水分と塩分を効率良く摂取できる経口補水液については後述します。
からだのコンディションを整える
睡眠不足によって体温調節機能は低下します。しっかり睡眠をとりましょう。
過度のアルコール摂取後(二日酔い)や風邪などの体調不良時は脱水状態の可能性が高く、より注意が必要です。食事からも1日約1リットルの水分を確保しているので、食事は抜かないようにしましょう。
また、私たちのからだは暑い環境に対して適度に慣らしていくことで、暑さに強くなります。
これを「暑熱順化」といいます。毎日30分ほどの運動(ウォーキングなど)をすることで暑熱順化は数日後から起こり、約2週間で完成するようです。
朝や夕方など比較的涼しい時間帯に、少し散歩をしてみてはいかがでしょうか。
経口補水療法について
実は経口補水療法の歴史は古く、1970年代から感染性胃腸炎に伴う脱水症に対してその有効性が示されています。コレラによる死亡率を30%→3.6%に減らし(Johns Hopkins Med J.1973;132:197-205.)、20世紀で最も重要な医学の進歩のひとつ(Lancet.1978;2:300-301.)と報告されています。
熱中症診療ガイドライン2015(日本救急医学会)では「実際には市販の経口補水液が望ましい」として、熱中症の予防・治療として推奨されています。
経口補水液には、テレビCMなどでよく見聞きするOS-1をはじめ数種類が市販されていますが、基本的に組成は同じ(1Lあたり塩分相当3g、カリウム20mEq、糖質25g)です。
腸管から効率良くかつ迅速に水分とミネラルを吸収するのに、この組成が適していると考えられています。
一般的なスポーツドリンクと比較すると、ナトリウムは2.5~3倍ほど、カリウムは4~8倍ほど多く含みます。一方、糖質は4~5割ほどと少なく、糖尿病をもつ方にとって血糖値への影響は比較的少ないです。
経口補水液は特別用途食品のなかの個別評価型病者用食品(消費者庁が許可)であり、下記のマークが目印です。大人では500~1000mLが摂取量の目安とされていますが、経口補水液の摂取が適した場面や摂取量は各々で異なるので、主治医と相談されるのが良いと思います。
さいごに
熱中症対策で最も大切なことは「誰にでも起こり得る」と認識し、「無理をしない」ということに尽きると思います。
まだまだ暑い日が続きますが、どうかお元気でお過ごしください。そして夏の思い出を多く作ってください。