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院長ブログ-12 年末年始、お酒はほどほどに|糖尿病内科 むらまえクリニック

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年末年始、お酒はほどほどに

早いもので2023年も残りわずかとなりました。今年は数年ぶりの忘年会だったり会食だったりで、お酒を飲む機会が増えたのではないでしょうか。
実際に日々の診察において「お酒はどのくらいが良いですか?」と聞かれる方もいらっしゃいます。
今回はお酒(アルコール)のからだや健康への影響についてです。
後半ではお酒と血糖値についてもふれようと思います。

 

アルコールの代謝(吸収と分解)
について

アルコールは胃から20%、小腸から80%が吸収され、大部分は肝臓で処理されます。
アルコールはアルコール脱水素酵素(ADH)によってアセトアルデヒド、そしてアルデヒド脱水素酵素(ALDH)によって酢酸に分解されます。酢酸は最終的に炭酸ガスと水になります。
アセトアルデヒドは有害物質で、悪酔い(頭痛や動悸)の原因となるのみならず、発がんリスクを高めるといわれています。お酒に強い体質かどうかは、アルデヒド脱水素酵素の活性の高さによるところが大きいです(ALDH活性が高い人はお酒に強い)。

 

アルコールと健康

古くから「酒は百薬の長」といわれてきたように、飲酒にはストレスの軽減やリラックス効果があり、良いコミュニケーションツールにもなります。ただし、それはアルコールを「適量」摂取した場合の話で、過剰な飲酒は健康を害することにつながります。長期にアルコールを過剰摂取することで障害されやすい臓器をいえば肝臓が有名ですが、他にも膵臓や胃腸、脳、代謝(血圧や血糖、脂質、尿酸)の病気などのリスクが高くなります。

 

では、アルコールの「適量」とはどのくらいでしょうか。結論から述べると「一概に言えない(人によって違う)」ということになります。なぜなら、飲酒による影響は一人一人異なるからです。たとえば男性より女性が、若い人より高齢の人の方が飲酒の影響が出やすいとされています。

 

つい先日(11月下旬)に「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」案が厚労省から出ました。
このガイドラインでは、お酒に含まれるアルコールの量(純アルコール量)と健康へのリスクが示されています(表1)。
純アルコール量(g)は「お酒の量(mL)×アルコール度数(%)×0.8」で算出できます。

 

純アルコール20gは、
アルコール濃度5%のビール500ml・アルコール濃度14%のワイン180ml・アルコール濃度14%の日本酒180mlに相当します。

このガイドラインでは「生活習慣病のリスクを高める」純アルコール量として、男性40g以上、女性20g以上が示されています。ちなみに純アルコール20gは、ビール(アルコール濃度5%)なら500mL、チューハイ(アルコール濃度7%)なら350mL、日本酒(アルコール濃度14%)なら180mL(1合)、ワイン(アルコール濃度14%)なら180mL、焼酎(アルコール濃度25%)なら100mL、ウイスキー(アルコール濃度40%)なら60mLほどに相当します。

 

表1 疾患別の発症リスクと飲酒量
(純アルコール量)

疾病名 飲酒量(純アルコール量)
男性 女性
脳卒中(出血性) 150g/週 0g<大
脳卒中(脳梗塞) 300g/週 75g/週
高血圧 0g<大 0g<大
胃がん 0g<大 150g/週
肺がん(喫煙者) 300g/週 データなし
肺がん(非喫煙者) 関連なし データなし
大腸がん 150g/週 150g/週
食道がん 0g<大 データなし
肝がん 450g/週 150g/週
前立腺がん
(進行がん)
150g/週 データなし
乳がん データなし 100g/週
こうした流れをふまえ、ほぼ全ての缶入りのアルコール飲料で、容器に純アルコール量が表示されるようになりました。純アルコール量という指標で、飲酒量の目安が「見える化」することは意義があると思います。飲酒量が少ないほどリスクが低くなる病気もあり、飲酒量をできる限り少なくするに越したことはないとも言えます。

アルコールと血糖値

大前提として「糖尿病があるから飲酒してはいけない」ことは決してありません。ですが、飲酒が血糖に与える影響について、また薬によっては注意点があることを知っておかれると良いと思います。

 

飲酒量と肥満や2型糖尿病との関連をみた研究において、飲酒量が増えると体脂肪が増え、肥満や2型糖尿病のリスクが高くなることが少し前に報告されました(J Clin Endocrinol Metab.2023;108(12):3320-3329.)。

 

糖質ゼロのビールやチューハイは、実はカロリーゼロではありません。
アルコール自体にもカロリーがあります(アルコール1gあたり7.1kcal)。

 

飲酒直後に血糖は下がりやすくなるので(肝臓からの糖新生を抑えるため)、糖尿病治療を受けている方は、お酒と一緒に食事(糖質)を摂るようにしましょう。飲酒から数時間経つと、逆に血糖は上がりやすくなります。

 

メトホルミンやSGLT2阻害薬は、過剰な飲酒によって副作用リスクが高くなります。先述したように、飲酒は高血糖の一因になるので、そういう意味でも「お酒はほどほどに」ということです。

 

さいごに

忘年会シーズンはそろそろ終わりますが、これから年末年始に新年会と、お酒をたくさん飲む(かもしれない)イベントが控えています。その際は、食事を摂りながら飲む、あいだにノンアルコール飲料をはさむなど、血中のアルコール濃度をなるべく上げないよう、意識してみてはいかがでしょうか。

 

「適切な飲酒量は人それぞれ」と上で述べましたが、爽快期~ほろ酔い期になるのが純アルコール量20~25gといわれているので、結局そのくらいが適量なのかもしれません。今年の思い出を、適量のお酒とともにふり返り、来年もより良い1年になることを期待して・・ゆっくりと年の瀬をお過ごしください。

2023年12月20日