糖尿病内科 むらまえクリニックロゴマーク

院長ブログ-14 帯状疱疹とそのワクチンの話|糖尿病内科 むらまえクリニック

糖尿病内科
むらまえクリニック
糖尿病内科 むらまえクリニックHOME > 院長ブログ > 院長Blog-14
院長Blog
14
帯状疱疹とそのワクチンの話

寒さもピークを越えつつありますが、まさに三寒四温といった感じで、寒暖差の激しい日々です。
体調を崩しやすい季節ですので、どうかご自愛ください。
今回のテーマである帯状疱疹は、免疫が低下すると発症するリスクが高くなる病気です。予防法の一つであるワクチンについても紹介しようと思います。

 

帯状疱疹とは

帯状疱疹のイメージイラストヘルペスウイルスの一種である「水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus:VZV)」によって引き起こされます。
水痘・帯状疱疹ウイルスという名の通り、水痘(水ぼうそう)の原因にもなります。
このウイルスは、初感染では水痘を発症します。
しかし水痘が治ったあとも完全にウイルスは消えず、体内(脊髄後根神経節)に潜んでいます。このウイルスが再活性化することによって、帯状疱疹は起こります。
わが国の成人の9割以上が子どもの頃に水痘にかかっているとされており、多くの人が帯状疱疹を発症する可能性があります。

 

帯状疱疹は、体の左右どちらかの神経の流れに沿って、発疹(赤い、ブツブツ)ができる病気です。その名の通り発疹は帯状に生じ、ピリピリ、チクチクした痛みを伴うのが特徴です。神経は全身にはり巡らされているので、様々な部位に起こり得ます。この発疹は1週間ほどで軽快しますが、厄介なことにその後も痛みが持続することがあり、帯状疱疹後神経痛といいます。
抗ウイルス薬を投与された方を対象にした調査で、32%ほどの方が30日後も、12%ほどの方が90日後も症状が残っていたことが分かりました。また、帯状疱疹は皮膚のみならず、眼の付近なら視力障害を、耳の付近なら顔面神経麻痺を、背中なら排尿障害を合併することがあります。

 

帯状疱疹は、加齢とともに発症リスクが高くなります。また、がん、自己免疫疾患、糖尿病、慢性腎臓病などの基礎疾患があることも、帯状疱疹のリスクになります。実際にわが国において帯状疱疹は、60歳代を中心に50~70歳代に多く見られますが、過労やストレスなどで若い人に発症することもあります。

 

実は、帯状疱疹を発症する人は増えていて、2009年~2019年の10年間で1.38倍に増加、60歳以上の方での増加が顕著でした。最近は若年層での増加が目立っており、2020年に帯状疱疹を発症した20〜40歳代の方は、前年の2.1倍でした(宮崎スタディ)。これは2014年に水痘ワクチンが小児で定期接種となり、水痘にかかる人が減った(ウイルスにふれることが減り、免疫が活性化される機会が減った)ことも一因のようです。

 

 

帯状疱疹ワクチンについて

ここからは帯状疱疹の予防についてです。
先述の通り、免疫力が低下すると帯状疱疹を発症するリスクが高くなります。食事(栄養)や睡眠(休養)をしっかりとる、適度な運動をする、ストレスをなるべく溜めないなど、免疫力を落とさないように心がけることが大切ですが、ワクチンという選択肢もあります。

 

帯状疱疹のワクチンには生ワクチン(弱毒生水痘ワクチン「ビケン」)と不活化ワクチン(シングリックス)の2種類があります。
適応となるのは、帯状疱疹の既往の有無にかかわらず「50歳以上」の方で、生ワクチンは2016年3月、不活化ワクチンは2018年3月に承認されました。さらに不活化ワクチンは2023年6月に「帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる18歳以上の方」にも適応が追加されました。それぞれの特徴を表にまとめてみました。

  生ワクチン
(弱毒生水痘ワクチン「ビケン」)
不活化ワクチン
(シングリックス)
接種部位 皮下 筋肉
接種回数 1回 2回
発症予防の効果 約51% 約97%
神経痛予防の効果 約67% 約89%
持続期間 5~8年 10年ほど(それ以上?)
副反応 局所反応、発熱 水痘様発疹(1~3%) 局所反応、筋肉痛(40%)、疲労(39%)、
頭痛(33%)、発熱(18%)

ここでいう予防効果とは、プラセボ(偽薬)群と比べて発症を減らした割合(相対リスク減少)のことです。
生ワクチンを用いた研究では、それぞれ約19000人のうち帯状疱疹を発症した人は、プラセボ群642人に対して、ワクチン群で315人でした(N Engl J Med 2005; 352:2271-2284.)。
不活化ワクチンを用いた研究では、それぞれ約7000人のうち帯状疱疹を発症した人は、プラセボ群210人に対して、ワクチン群で6人でした(N Engl J Med 2015; 372:2087-2096.)。予防効果の数字を直接比べることはできませんが、不活化ワクチンは高い効果が期待されています。また、免疫がとても低下している方(抗がん剤やステロイドなどで免疫を抑える治療をしている場合など)では生ワクチンは接種できませんでした。
むしろそのような方こそ帯状疱疹のリスクが高いわけですが、そのような方にも不活化ワクチンは接種可能です。不活化ワクチンの弱点としては、高費用(当院では22000円が2回)なのと、全身性の副反応が生じる割合が高いことでしょうか。

 

さいごに

帯状疱疹とその予防法の一つであるワクチンについて紹介しました。
帯状疱疹ワクチンの接種にかかる費用を一部負担してくれる自治体が増えてきています(これを書いている時点では明石市や神戸市において助成はなさそうです)。

ご自身の帯状疱疹のリスクやワクチン接種についてなど、もし気になることがあるようなら、一度主治医と相談されてみてはいかがでしょうか。

2024年2月26日