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院長ブログ-15 ウゴービ発売に際して|糖尿病内科 むらまえクリニック

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ウゴービ発売に際して

つい先日の2月22日、新たな抗肥満薬「ウゴービ」が発売されました。ウゴービは抗肥満薬として約30年ぶりに登場した薬で、減量への効果が高い薬剤として話題になっていましたので、ご存知の方も多いかもしれません。

 

ウゴービとは

肥満症治療薬ウゴービウゴービはGLP-1受容体作動薬といわれる薬で、私たちが2型糖尿病をもつ方に処方している、週1回の注射薬であるオゼンピックや、1日1回の経口薬であるリベルサスと同成分(セマグルチド)です。
血糖依存性に作用、すなわち食後高血糖を改善する効果が高く、さらに用量が増えるに伴って食欲を抑える作用が強くなり、減量のサポートになります。2型糖尿病をもつ方に対して、多くは0.5mgもしくは1.0mg(最大用量)で使用しているのですが、肥満症に対しては2.4mgまで使用することができます。

 

日本人360名を含む、肥満症をもつ人401名(平均体重86.9 kg)を対象にした臨床試験で、ウゴービ2.4mgを使用した人は、投与後68週までに平均11.3 kgの体重減少を認め、体重変化率は13.2 %と、高い減量効果が示されました(STEP 6:日本および韓国の肥満症患者を対象としたウゴービの国際共同試験)。

 

安全性について、GLP-1受容体作動薬の最も頻度の高い副作用は胃腸症状(悪心・嘔吐、便秘)です。用量を増やすと胃腸症状が出現するリスクも高くなります。オゼンピックを処方し慣れている私たち糖尿病専門医でも、セマグルチドとしてオゼンピックの倍量以上のウゴービを用いた時の副作用の出方は、正直なところ想像し難いと言わざるを得ません。

 

日本肥満学会が出した「肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント(2023年11月25日)」では、重大な副作用として低血糖、急性膵炎、胆のう炎や胆管炎に注意すべきと記載があります。また、メンタルヘルスの変化にも注意し、自殺企図や自殺念慮を有する方などには特に留意する必要がある、とされています。

 

ウゴービを使用するための条件

肥満症は「BMI 25 kg/m2以上かつ肥満に関連する健康障害」と定義されます。
肥満に関連する健康障害には(1)耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)(2)脂質異常症(3)高血圧(4)高尿酸血症・痛風(5)冠動脈疾患(6)脳梗塞(7)非アルコール性脂肪性肝疾患(8)月経異常・不妊(9)閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群(10)運動器疾患(11)肥満関連腎臓病 があります。

 

ウゴービを使用するためには条件があります。以下の1~3を全て満たす方が、ウゴービの適応となります。

  1. 2型糖尿病、高血圧、脂質異常症のいずれかがある
  2. 食事療法、運動療法を行っても十分な効果が得られない
    (何度か管理栄養士による栄養相談を受ける必要があるようです)
  3. BMI 27 kg/m2以上+肥満に関連する健康障害が2つ以上、もしくはBMI 35 kg/m2以上

また、処方できる医療機関にも条件があります。肥満症治療に関連する学会(日本糖尿病学会、日本内分泌学会、日本循環器学会)の専門医が常勤する教育研修施設、つまり大学病院や地域の中核病院に限られます。
ですので、私たちのようなクリニックでは処方することはできません。

クリニックと大学病院の比較

 

これについては個人的にも、限られた医療機関から使用し始めるのが望ましいと思っています。
私自身、昨年まで在籍した神戸大学では、肥満症治療チームに参加していました。そこでは、さまざまな職種(看護師、管理栄養士、理学療法士、薬剤師、公認心理師、外科医、精神科医、内科医など)のメンバーが連携し、肥満症をもつ人の治療にあたっていました。そこで肥満症診療の奥深さを学ぶことができました。

まずはそのような医療機関で、ウゴービに対する使用感や手応え、副作用への対処など、使用経験を積んでいくのが良いと、厚生労働省も判断したのではないでしょうか。

 

さいごに

少し前に発表された論文で、2型糖尿病がない肥満症の人に対して、ウゴービを使用することで、心筋梗塞や脳卒中などのリスクが低下(プラセボ群に対して20%ほど軽減)する可能性が示唆されました
(N Engl J Med.2023;389(24):2221-2232.)。
すなわち、ウゴービは抗肥満薬にとどまらない可能性を秘めていると言えます。
私個人としては、まずは「安全に」ウゴービが使用されることを願っています。
ウゴービへの知見が深まれば、より身近にウゴービを処方できる日がやってくると思います。

2024年3月15日