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院長ブログ-16 デジタル療法~アプリを処方する|糖尿病内科 むらまえクリニック

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デジタル療法~アプリを処方する

 少し前まで満開だった桜も大分散り、惜春を感じる今日この頃です。
当院はこの4月、開院して2年目を迎えました。新しいスタッフも加わり、一層チームワークを高めて、私たちの目指す医療を提供できるように努めてまいります。

 私たち医療スタッフは患者さんの治療サポートを目指していますが、みなさんのスマホもサポーターになる、という話をしようと思います。すなわち、治療用アプリについてです。

 

 治療用アプリはデジタル療法とも呼ばれ、非薬物療法(食事や運動、認知行動療法)の効果を高める方法の一つとして、近年開発がすすんでいます。治療用アプリによって、患者さんの行動変容が促されることが期待できます。わが国では2020年12月に禁煙治療アプリが初めて治療用アプリとして保険収載されました。

 

高血圧のアプリについて

デジタル療法~アプリを処方する禁煙治療アプリに次いで、高血圧に対するアプリが2022年9月に保険適応となりました。血圧は血糖と同様、生活習慣で変わってきますし、糖尿病がある人は高血圧になりやすいとされています。

 ここからは高血圧治療補助アプリ(CureApp HT)について紹介しようと思います。 このアプリでは、医療機関への通院と併せて6ヶ月間のプログラムが提供されます。患者さんには日々の血圧、体重、服薬、食塩摂取量などを記録してもらいます。

その情報をもとに、生活習慣へのアドバイス、行動目標の設定がなされます。

また、これらの記録は医療機関とも共有することができます。
具体的には、以下のような流れです。

 

 

【STEP1. 知識の習得(2週間)】

高血圧についての一般的な情報、治療に必要な知識の習得を目指します。
患者さんの課題に応じた生活習慣改善のためのポイントを紹介してくれます。

 

【STEP2. 行動の実践(1ヶ月)】

6つのカテゴリー(減塩、減量、運動、睡眠管理、ストレス管理、節酒)順に、血圧に良い行動の実践を目指します。STEP1.の情報をもとに、適切な行動をアプリが提示します。
個々に合った取り組み方を見つけていきます。

 

【STEP3. 行動の習慣化】
患者さん自身が設定した行動目標に対して、日々ふり返りながら実践度を高めていきます。

 

 一連の流れは、キャラクターとの対話を通じて行われます。キャラクター(白衣を着た女性)は、優しく教えてくれることはもちろん、時に励まし、行動が達成できると賞賛してくれます。
こうしたやり取りが、患者さんのやる気を高め、自己効力感(「やればできる!」でやる気アップ)につながるのだと思います。

 

高血圧治療補助アプリの効果

デジタル療法~アプリを処方する 2022年9月から2023年4月にアプリを処方された方(22~87歳の554名)を対象にした研究で、アプリ使用開始時に比べて、12週間後の収縮期血圧(起床時)は平均8.8 mmHg下がっていました。
収縮期血圧が10 mmHg下がると、脳卒中のリスクは30~40%低下、虚血性心疾患のリスクは15~20%、心不全のリスクは40 %低下するとされており(J Hypertens. 2014;32(12):2285-2295.)、この結果はインパクトがあると思います。
特に降圧薬を使用していなかった方で平均10.5 mmHg下がっており、「できれば薬を飲みたくない」「血圧の薬を減らしたい」といった方にとって、このアプリは有用なのではないでしょうか。
 また、承認前に実施された国内第Ⅲ相試験(HERB-DH1)において、アプリを使用することで、血圧低下のほか、減量への有効性が示唆されています(Eur Heart J. 2021;42(40):4111-4122.)。

 

さいごに

 海外では糖尿病に対する治療用アプリも登場しており、そう遠くない将来、当たり前のように薬と一緒にアプリを処方する時代がやって来るかもしれません。現時点で、当院では保険適応のある治療用アプリを使用することはできませんが、今後導入を検討中です。
治療用アプリの使用が可能になった際には、ホームページでお知らせさせていただきます。
 年度末から新年度と慌ただしい日々をお過ごしかと思います。気候の変化も重なり、疲れが出ている方もいらっしゃるかもしれません。そこは「春眠」ということで、ゆっくり休んで体力回復にお努めください。

2024年4月28日