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院長ブログ17- 「内臓脂肪の減少」をサポートする薬|糖尿病内科 むらまえクリニック

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「内臓脂肪の減少」をサポートする薬

 前々回(第15回)で新たな肥満症治療薬ウゴービを紹介しましたが、さらに4月8日にも新たな肥満治療薬である「アライ」が登場しました。
 ニュースやテレビCMで、その名を見聞きしたことがある方も多くいらっしゃるかもしれません。
今回はアライについて書こうと思います。

 

アライとは

「内臓脂肪の減少」をサポートする薬イメージ アライはリパーゼ阻害薬という薬で、すい臓から分泌される脂肪分解酵素であるリパーゼの活性を阻害します。リパーゼの働きを抑えることで、食事から摂取した脂肪の一部(約25%)を体内に吸収させず、便と一緒に排出させます。いわば「食べ過ぎ(脂肪分)を、少しだけなかったことにする」作用があるといえます。

 

アライの有効成分であるオルリスタットは、1997年以降、海外の多くの国で使用されてきました。アライは、このたび医療機関で医師が処方する医療用医薬品ではなく、薬局・薬店で購入できる薬品として発売されました。ただし要指導医薬品であるため、薬局で購入するにあたっていくつか条件があり、これについては以下に記載します。

 

 商品名のアライは「寄り添う、支える」を意味する「ally」からきているようです(アライさんは関係ないみたいですね)。アライは6日分で2530円、30日分で8800円なので、1日300~400円ほどです。

 

 肥満治療薬や内臓脂肪減少薬と呼ばれるように、肥満による健康障害の予防を目指すための薬という位置づけです。

 

アライを使用できる方・使用するための条件

① 18歳以上

② BMIが25 kg/m2以上、35 kg/m2未満

③ 腹囲が男性で85 cm以上、女性で90 cm以上

④ 肥満に関連する健康障害がない

⑤ 初回購入前に3ヶ月間以上、生活習慣改善の取り組みを行っている

⑥ 初回購入の1ヶ月前から使用中にかけて、生活習慣改善の取り組みと体重、腹囲を記録する

 

④の肥満に関連する健康障害とは(1)耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)(2)脂質異常症(3)高血圧(4)高尿酸血症・痛風(5)冠動脈疾患(6)脳梗塞(7)非アルコール性脂肪性肝疾患(8)月経異常・不妊(9)閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群(10)運動器疾患(11)肥満関連腎臓病 です。

 

アライの有効性・安全性

内臓脂肪面積イメージ 日本人を対象とした臨床試験において、アライを服用開始から半年後に腹囲はマイナス2.49 cm、内臓脂肪面積はマイナス14.10 %と、プラセボ(偽薬)を服用した人(腹囲はマイナス1.63 cm、内臓脂肪面積はマイナス5.78 %)と比較して、有意に減少していました。長期投与試験では、アライを1年間服用した方は、内臓脂肪面積が平均21.52 %減少しました(大正製薬のサイトから)。


 次に安全性について、副作用の多くは「脂質をそのまま排出する」その薬効に関連するものです。具体的には「便が油っぽくなる(油漏れというようです)」が34.2 %、「おならをすると便が漏れる」が23.3 %の方でみられました。そのほか稀な副作用として、肝機能障害があります。

 

 下痢や腹痛、便失禁といった副作用も比較的頻度が高く、特に公共交通機関を利用する方は、飲み始めて数日間は注意が必要です。副作用対策として、脂肪分の多い食事を控える、慣れるまでおむつや便漏れパッドを使用する、などがあります。

 

さいごに

 先月登場したばかりの内臓脂肪減少薬アライについてまとめてみました。

アライを服用するにあたって、服薬管理や生活習慣の記録、生活改善のアドバイスなどサポートツールとして、LINEミニアプリ「アライSTEP UP DIARY」があるようです。
副作用(消化器症状)予防のため、そして減量効果を高め、かつ減量期間を長続きさせるために、デジタル療法を併用するのが有用だと思います。

 

 過剰な内臓脂肪は、糖尿病などの代謝異常の原因(インスリン抵抗性)になるほか、動脈硬化や心血管疾患とも関連します。内臓脂肪を減らし、肥満に伴う健康障害のリスクを下げるための手段として、一つの選択肢となり得るのではないでしょうか。
「ダイエットしたいけどうまくいかない」という方にとって、アライはきっかけになるかもしれません。ご興味ある方は、近くの薬局に問い合わせてみてください。

2024年5月27日