みなさんは「生活習慣病」に対してどのようなイメージを持っていますか?
生活習慣病というと「生活習慣が原因の病気」と、まるでその人に責任があるみたいな言い方だと思うのは私だけ(職業病)でしょうか?
そんな訳で、個人的には生活習慣病という言葉が好きではなく、なるべく使わないようにしています。あらためて生活習慣病について考えてみることにしました。
生活習慣病とは
生活習慣病といえば、糖尿病、高血圧症、脂質異常症が代表的ですが、その他に痛風(高尿酸血症)、呼吸器疾患、肝疾患、歯周病、脳血管障害や虚血性心疾患、がん・・と多くの疾患が含まれます。
生活習慣病は、海外では「Noncommunicable disease(非感染性疾患)」と呼ぶことが一般的です。それでは、なぜ日本で「生活習慣病」と呼ばれるようになったのか、歴史をふり返ってみます。
まず、生活習慣病の前身とも言える「成人病」という概念が、1956年頃に登場しました。40~60歳くらいの働き盛りに多い、死亡率が高く、死因の多くを占める疾患(脳卒中や心臓病、がんなど)を指します。
明石にあるがんセンターも、以前は「成人病センター」でしたね。
時は流れ、成人病の多くは生活習慣(食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒など)が、その発症や進行に関与していることが分かり、1996年に「生活習慣病」という言葉が使われるようになりました。
生活習慣病というのは、もともと行政用語として登場したのが、医療の世界で使われるようになり、さらに一般的な言葉として広がったということです。
「年齢とともに発症は避けられない➡早期発見・早期治療を目指す」というのが成人病の考え方でした。
それに対して「生活習慣を改善することで発症を防ぐことができる➡予防を目指す」というのが生活習慣病の考え方です。
つまり、成人病から生活習慣病に呼び方が変わったのは、前向きな意味があったということです。
糖尿病のリスクを下げる食習慣とは
話は変わりますが、食習慣と糖尿病の発症との関連を調べた研究が少し前に発表されました
(J Diabetes Investig.2024;15(8):1017-1025.)。
京都府立医科大学のグループが中心となり、日本人約13万人を対象に10年間にわたり追跡し、食習慣と糖尿病の発症との関連を検討しました。その結果、「朝食を抜く」「早食いをする」「夕食後に間食をする」「就寝前2時間以内に夕食を食べる」といった食習慣は、糖尿病の発症リスクを高くすることが示されました。
いずれかの食習慣に心当たりのある方は、見直してみてはいかがでしょうか。
また、先に述べた4つの食習慣のうち、最も糖尿病発症と関係しているのが「早食い」でした。普段とくに意識していない食べる時間を、意識して時間をかけてみることで、糖尿病のリスクを低くできるかもしれません。
さいごに
肥満、不規則な食事、塩分過多、運動不足、喫煙、過剰な飲酒、睡眠不足、ストレスなどが、「不適切な」生活習慣と言われたりします。ですが、その「不適切な」生活習慣は誰のせいでもありません。生まれ育った家庭環境や、現在の生活環境によるところが大きく、個人ではどうしようもできないことが多々あると思います。
生活習慣病を前向きな言葉として捉え、予防や改善につながる良い生活習慣を一人一人に提案できるよう、私たちは常に知識をアップデートしていきたいと考えています。
2024年9月25日