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院長ブログ26-花粉症はいつどこから来たのか|糖尿病内科 むらまえクリニック

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26
花粉症はいつどこから来たのか

寒さもピークを越え、暖かくなると花粉症シーズンがやってきます。どうやら今年も花粉症が猛威をふるいそうです。花粉症をお持ちの方は実感されていると思いますが、花粉症はQOL(生活の質)を著しく低下させます。さらに、花粉症で悩む人は年々増加しており、花粉症は社会問題と言っても過言ではありません。
今回は前回に続いて「流行りもの」シリーズです。花粉症は身近な病気ですが、意外とご存知ないことが多いかもしれませんよ。

 

花粉症とは

むらまえクリニック-花粉症イメージイラスト花粉症とは、花粉によって引き起こされるアレルギー疾患です。体内に侵入した花粉を異物と認識し、この異物(抗原)に対する抗体ができることで、再び侵入した花粉を排除しようとして起こります(抗原抗体反応)。本来からだを守るための免疫が、からだにとって害をなしてしまうのが、アレルギーです。


花粉症は「季節性アレルギー性鼻炎」とほぼ同義で使われ、くしゃみ、鼻水、鼻づまりといった鼻炎症状が代表的な症状です。他には、目のかゆみや充血・流涙などの結膜炎症状、頭痛や喉のかゆみや喘息、発熱や下痢と多岐にわたります。

 

わが国で最も多い花粉症は、春先(2月~4月頃)のスギ花粉症です。国内で花粉症の原因となる植物は約80種類あり、頻度は多くないものの、イネ花粉症は夏~秋にかけてみられます。

日本耳鼻咽喉科学会の報告では、花粉症の有病率は約10年ごとに10ポイント程度ずつ増加しており、2019年は42.5 %(2019年)でした。若年で発症する人も増えており、花粉症は「国民病」と言えます。

 

いつから?

ここからは、花粉症の歴史についてです。紀元前の記録に、アレルギー性鼻炎らしい症状(「体質と季節と風が関係している」byヒポクラテス)について書かれているようですが、花粉との関連が明らかになったのは19世紀に入ってからです。

 

1819年にジョン・ボストック医師(英)が「夏になると、畜産に従事する人の間で風邪のような症状が流行し、牧草との関与が疑われる。」と報告し、これらの症状は『hey fever(枯草熱)』と呼ばれていました。そこから少し時は経って、1873年にブラックレイ医師(英)が、枯草熱の原因はイネ科植物の花粉とであると明らかにしました。

 

一方、日本で最初に花粉症の症例が報告されたのは1961年のブタクサ花粉症で、スギ花粉症にいたっては、1963年に初めて報告されました。わが国において花粉症の歴史は約60年と浅く、花粉症が「現代病」とも言われる所以です。

 

どこから?

当然「花粉から」ということになりますが、ここでは花粉症の発症要因などについて述べます。

 

①アレルギー素因(体質)

喘息やアレルギー性の皮膚疾患など、アレルギーの素因を持っている人では、花粉に対する抗体が産生されます。また、家族に花粉症の人がいる場合も花粉症を発症しやすいと考えられています。

②免疫とのバランス(シーソー理論)

花粉症の発症メカニズムについて、以前は「コップ理論」で説明されていました。抗原(花粉)に曝されていると、年月をかけて抗体が増えていき、一定量をこえると溢れ出るように症状が現れるという考え方です。
しかし最近では、コップ理論より「シーソー理論」が主流になりつつあります。われわれが持つ免疫力が花粉の負荷に勝っていれば花粉症は発症せず、花粉の負荷が免疫力を上回ると花粉症になるという考え方です。

③発症リスクを高くする可能性があるもの

そもそもわが国で花粉症の人が増えている理由として、花粉量の増加はもちろん、食生活の変化(高たんぱく食)や腸内細菌叢の変化、感染症(寄生虫)の減少などが考えられています。
また、空気中の汚染物質(タバコの煙や黄砂など)、エアコン等の使用による空気の乾燥も、花粉症の症状を悪化させる可能性があります。
先ほどのシーソー理論をふまえると、栄養バランスの乱れや睡眠不足、ストレスによって免疫力が低下することも花粉症の発症につながります。

 

さいごに

今まで花粉症がなかった人も、この春に花粉症を発症する可能性がないわけではありません。風邪と区別がつきにくいこともあります。アレルゲンへの反応(抗体価)を調べる検査を、当院でも行うことができます。各症状を和らげる薬の選択肢は、以前よりも増えています。さらに根治を目指せる治療として、スギ花粉症に対するアレルゲン免疫療法があります。

春を満喫するためにも、花粉症の症状でお困りの方や「この症状、花粉症かも?」という方は、主治医や医療機関にご相談ください。

2025年2月22日