みなさんは普段、歩く速さを意識していますか?急いでいる時は自然と早歩きになるかもしれませんが、普段から意識して早歩きをしている人は少ないと思います。今回は、歩く速さが健康状態を測る「ものさし」になるかもしれないという話です。
歩く速さは、健康と要介護の中間の状態を表す「フレイル」や、筋肉量が減り身体機能が低下した状態を表す「サルコペニア」の診断基準の項目の一つです。歩く速さが秒速0.8m(時速2.88 km)未満がその基準に該当します。ちなみに秒速0.8mというのは、5歩進んで戻るのに10秒かかるくらいの速さということになります。
早歩きと寿命・早歩きと糖尿病
ここからは、歩く速さと寿命、また歩く速さと糖尿病との関連についての研究結果を紹介します。
65才以上の高齢者3.5万人を対象にした研究(メタ解析)で、歩行速度が増加するにつれて生存率が高かったと報告されています(JAMA.2011;305:50-58.)。
同様に、約51万人を対象とした研究(メタ解析)で、歩行速度が速いほど2型糖尿病の発症リスクが段階的に低下することが示されました(Br J Sports Med.2024;58:334-342.)。時速4km以上で歩くことで、糖尿病リスクが有意に低下していました。時速4kmというのは一般的な歩く速度ですので、普段より少し速く歩くことが、糖尿病の予防につながるかもしれません。
早歩きによって心肺機能の向上、筋肉や骨の向上・維持、認知症リスクの低下といった恩恵があり、寿命の延伸につながると考えられます。また、早歩きによって代謝が活性化し、インスリン感受性が高まることで、糖尿病リスクが低くなります。
早歩き=ブリスクウォーク
早歩きが健康に良いということはご理解いただけたと思います。早歩きは「ブリスクウォーク(brisk walk)」と訳されます。「ブリスクウォークをしている」と言えば、立派なトレーニングをしている気がしませんか?
ここからはブリスクウォークの具体的な方法についてです。ペースは、時速5kmほど(会話はできるが、少し息が上がるくらいの速度)が目安になります。
ブリスクウォークを効果的に行うためには、正しいフォームが重要です。
はじめは1回10分くらいから行い、体力などに応じて徐々に時間を延ばしていくと良いでしょう。
おわりに
早歩きはさまざまな病気のリスクを下げ、長生きにつながる可能性があるということを紹介しました。用事などで何気ない移動の際、ブリスクウォークを取り入れてみてはいかがでしょうか。もし『運動したいけれど、なかなか難しい・・』とお悩みなら、まずは「少し速く歩くこと」から始めてみませんか?
2025年5月19日