GLP-1受容体作動薬(オゼンピック、リベルサスなど)やGIP/GLP-1受容体作動薬(マンジャロ)は食後高血糖を抑える効果に加えて、食欲を抑え満腹感を高めることで減量効果を有しています。これらの薬剤(以下GLP-1製剤とします)の一部は、近年「肥満症」に対しても保険適応が拡大されました。
当院では2型糖尿病がない方に対してGLP-1製剤を使用することができませんが、2型糖尿病をもつ方の血糖マネジメント改善のためにGLP-1製剤をよく用います。
先日(7月14日)「減量サポートでGLP-1製剤を使用する上での食事・運動の指針」が米国医師会雑誌に掲載されました(JAMA Intern Med. 2025 Jul 14.doi:10.1001/jamainternmed.2025.1133.)。
GLP-1製剤を使用している方はもちろん、これからGLP-1製剤を検討されている方にとっても参考になる内容でしたので、紹介しようと思います。
食事についての推奨
以下の4つのポイントを、英語での頭文字をとってMEAL(ミール)プランとして提案されています。
●筋肉量の維持(Muscle maintenance)
食事の最初に、魚や豆製品などから20〜30gのたんぱく質摂取を目指します。一般的な活動量の方の場合、1日あたり体重1kgあたり1.0〜1.5gのたんぱく質が目安です。食欲がない場合は、プロテイン飲料(1回20g以上)を活用しても良いでしょう。
●エネルギーのバランス(Energy balance)
普段より少なめの食事に、軽食(果物、ナッツ、ヨーグルト)を補ってエネルギーを保ちます。精製穀物(白パン、菓子パン)や果糖入り飲料は避け、ゆっくり消化される炭水化物(サツマイモ、オートミール)を選びましょう。オリーブオイルやアボカドなど健康的な脂質を加えることは、満腹感を長く保つために有効です。
●副作用の回避(Avoid side effects)
吐き気対策:高脂肪食品(揚げ物、加工肉)を避け、全粒粉パンやシリアルが良いでしょう。生姜茶や果物も有効です。
胸やけ対策:少量ずつゆっくり食べ、食後2〜3時間は横にならないようにします。揚げ物ではなく「焼く・蒸す」を選び、刺激物(黒胡椒、唐辛子、ニンニクなど)は避けましょう。
便秘対策:食物繊維(水溶性、不溶性ともに)の摂取を増やし、水分を十分にとりましょう。
●水分摂取(Liquid intake)
脱水予防のため、1日2〜3リットルの水分を摂取しましょう。水分の多い野菜や果物(きゅうりやスイカなど)、スープを活用し、アルコール、カフェイン、果糖入り飲料はなるべく少なくします。
運動のポイント
おわりに
巷では「痩せ薬」と噂されるGLP-1製剤ですが、薬だけで得られる減量効果は短期的かつ限定的だと言わざるを得ません。
健康的に減量するためには筋肉量を減らさず、脱水や栄養失調を回避することが重要です。今回紹介した食事や運動のポイントは、GLP-1製剤の持続的な減量効果を高め、さらに副作用リスクを軽減する上で有用です。GLP-1製剤を使用している方やGLP-1製剤に興味のある方は参考にしてみてはいかがでしょうか。
2025年8月20日